コスプレイヤーからレースクイーンへ……綾瀬まおが語るRQの難しさとレースの魅力

 今シーズン、サーキットに登場するレースクイーンに迫る「RQインタビュー」。第5回は、スーパーGTでARTA GALS、そしてスーパーフォーミュラではraffinee Ladyを務める綾瀬まおさんが登場。コスプレイヤーが感じたレースクイーン業界とは?

RQインタビュー 2021 Vol.5 綾瀬まお

Text&Photo:Yoshita Tomohiro
Photo:Satoru Tabuchi

スーパーGT開幕戦ではグリッドボードを担当した綾瀬まおチャン

スーパーGT開幕戦ではグリッドボードを担当した綾瀬まおチャン

 開幕戦から白熱したバトルが展開されている2021年のスーパーGT。早くも第2戦が終了し、GT500・GT300ともに例年以上の白熱したバトルをみせている。

 レースクイーンたちも、コロナ禍でレース期間中の活動は制限されているが、ソーシャルディスタンスをしっかりと確保した上でファンと交流するなど、サーキットで笑顔と元気を届けている。

 そんな彼女たちは、様々なきっかけでレースクイーンという仕事を始める。“コスプレイヤー”がきっかけでレースクイーンになったのが、ARTA GALSの綾瀬まおさんだ。

 2017年にレースクイーンデビューし、今年で5年目を迎えた綾瀬さん。スーパーGTでは、ARTA GALSでは3年目ということもあり、すっかりオレンジと黒が基調としたチームの一員に染まっている感がある。

raffinee Lady/綾瀬まお

スーパーフォーミュラではraffinee Ladyを務める

 綾瀬さんは、コスプレイヤーとしても知られており、様々なオフィシャルキャストを務めるほか、自身でコスプレの写真集も出すなど人気のコスプレイヤーのひとり。実はレースクイーンの仕事も始めるようになったのも“コスプレ”がきっかけだったという。

「コスプレは、趣味という感じで学生の頃からやっていました。その時は、ただ楽しくてやっているみたいな感じで、その当時は自分がモデルをやるとか仕事にしようというつもりはなかったです。でも、コスプレをして写真とかを撮られたりする中で、モデルをやる楽しさも感じ始めました」

 徐々にモデルの仕事にも興味を持ち始め、事務所に入ったという綾瀬さん。そこで、レースクイーンの仕事を始めるきっかけが生まれた。

「事務所の社長に勧められてやってみたんですけど、最初は“どんなものだろう?”と思って、いろいろ調べたら……レースクイーンって本当にいるんだ!と思いました(笑)」

「正直、レースクイーンは、ドラマやアニメでしか見たことがなくて『本当にレースクイーンって存在するんだ!』と思って、そこで感動しました! いろいろ調べているうちに、すごい美人のレースクイーンさんもたくさんいて、そこで憧れの方ができましたね」

「あと父がレースが好きなので、もし自分がレースクイーンになったら、お父さんは喜んでくれるんじゃないかと思ったりとか……自分の意思というよりは、周りの人が喜んでくれるんじゃないかとか、こんなに綺麗な人がいるんだという憧れの気持ちで始めました」

 最近ではアニメとコラボしたチームのレースクイーンが登場したり、コスチュームも様々な種類のものが出始めている。その中で綾瀬さんは“クール路線”のコスチュームを着ているのが印象的だが、実はレースクイーンを始めるときに、こんなエピソードがあったという。

「実は、最初はアニメ系のチームに入るのを憧れて、オーディションも実際に受けたんです。でも、そうすると趣味でのコスプレができないなど制約が多くて……やっぱり趣味でコスプレはしたかったので、それ以外のチームのレースクイーンとなることを決めました」

「アニメ系のチームを置いておいても、けっこうチームごとで違って、フリフリのスカートもあれば、ARTAみたいにスマートでカッコいいものあります。コスプレイヤーの友達とかにはARTAのコスチュームがすごい好評でした。RQのコスチュームはカッコいいので、着ていて楽しいですね」

 普段、Twitterでもレースクイーンとコスプレイヤーでアカウントを分けて投稿しているという綾瀬さんだが、コスプレ友達からも彼女のレースクイーン姿は好評で、そこからレースにも興味を持ってくれる人もいるとのこと。綾瀬さんは自身の活動を通して、双方の架け橋になれればと考えている。

「コスプレをしている私を見ているから、すごく印象が違うのが良いみたいでで『ギャップがある!』って褒めてもらえることが多いです。あと、コスプレきっかけで友達になった子もレースクイーンアカウントのTwitterを見てくれたりとかしていますし、“スーパーGTプラス”で映っていたのを見たらしくて、昔のバイト先の友達から急にLINEで連絡が来たりすることもあります」

「逆に、レースがきっかけで私を知ってくれたファンの人たちにも、コスプレを通してアニメとかゲームを好きになってくれると嬉しいし、逆にコスプレきっかけで来てくれた方が、レースを見るようになって、サーキットに足運んでくれる方もいるので、どっちの架け橋にもなれるといいですね」

“まおと”名義でコスプレイヤーとして活動

“まおと”名義でコスプレイヤーとして活動

 しかし、レースクイーンとコスプレイヤーは、一見似ているように感じられがちだが、綾瀬さんは“まったく別のもの”だと語った。

「まったく別のものですね。コスプレは“すでにいるキャラクターに自分がなりきる”ので、“綾瀬まお”という自分を殺して、扮しているキャラクターの人格になるという感じです」

「レースクイーンは逆にそういったキャラクターがなくて、自分自身でどうPRするかなので……どちらかというと、私はRQの方が恥ずかしいですね。自分を出すというのが……(苦笑)」

「コスプレだと決められたキャラクターを演じる方が楽というか『そのキャラなら、こういうポーズをするだろう、こういう仕草をするだろう』と考えられるんですけど、レースクイーンだと、そういうのがなくて自分で作っていかなきゃいけないので、そこはけっこう迷ってしまいますね」

 そんな綾瀬さんだが、レースクイーンを始めて、モータスポーツの魅力にもすっかり取り憑かれている。お父さんがレース好きというのも少なからず影響しているようだが、レースクイーンとしてサーキットに来て、そこで生まれる数々のガチンコ勝負に心打たれたという。

「実際に生でレースを見るうちに“すごい青春だな”って思いました。青春少年マンガを見ているような感じで、物語のような奇跡が起こったりするじゃないですか。そういうのが、人間ドラマをみてるなと思って、気がついたら自分がのめり込んでいました」

「スーパーGTは特にそうなんですけど、ドライバーさんの腕だけじゃないところがあるんですよね。チームの戦略だったりとか、サクセスウエイトによってどこが勝つかわからないというハラハラ感を毎戦与えてくれます」

「特に昨年のスーパーGT最終戦とかは、本当に鳥肌が立ちました。“事実は小説より奇なり”というか『本当にこんなことが起こるんだ!』みたいなことが、生で見られるのが、モータースポーツの魅力だなと思います」

「あと、サーキットで生で見る速さというのも全然違います。テレビ中継だとカメラがちゃんと追いかけてくれるから見やすいですけど、実際にコース上を走っているマシンを見ると『こんなに速いんだ!』と驚きます」

「エンジン音とかサーキットでしか感じられない迫力もありますし、ドライバーさんも毎年見ていれば見ているほど、感情移入してしまう部分もあります」

「例えば昨年苦戦していたドライバーさんが『今年は頑張ります!』と言っている姿をみると応援したくなるし、表彰台に立って泣いている姿をみると、こっちまで涙を流しちゃうこととがありますね」

 毎回レースの応援でも、気がつくと熱が入りすぎてしまうという綾瀬さん。ぜひ、彼女と同じようにレースで生まれる“人間ドラマ”に注目して観戦してみると、いつもとは違ったサーキットでの1日を過ごすことができるかもしれない。

■コスチュームギャラリー/綾瀬まお


 
 
■2021レースクイーンインタビュー
Vol.4 引地裕美/憧れだった舞台に自分が立つ……フレッシュエンジェルズ2年目の引地裕美が常に心がけていること
Vol.3 相沢菜々子/後輩から先輩へ……相沢菜々子が迎える“心機一転”の2021年と“あの時の想い”
Vol.2 桃原美奈/あの“レジェンドレースクイーン”桃原美奈が限定で現役復帰「多くの人にレースの魅力を伝えたい」
Vol.1 林紗久羅/ファンとチームの架け橋に……RQ歴10年目の林紗久羅が“大切にしていること”

カテゴリー: