今シーズン、サーキットに登場するレースクイーンに迫る「RQインタビュー」。第8回は、レースクイーン・オブ・ザ・イヤー19-20も受賞した人気レースクイーンの近藤みやびチャンが登場。彼女のレースクイーンへの想いとは?
RQインタビュー 2021 Vol.8 近藤みやび
Text:Yoshita Tomohiro
Photo:Tabuchi Satoru
2021年もスーパーGTやスーパーフォーミュラなど、国内トップカテゴリーでレースクイーンとして活躍し、今では後輩たちから“憧れの的”として見られることも多くなった近藤みやびさん。
レースクイーン歴7年目を迎えた今年も変わらなぬ努力を続けながら、誰よりも熱い“秘めたる想い”を持ってサーキットに立っている。
2015年にレースクイーンデビューを果たした近藤さんは、各カテゴリーで活動の場を広げていき、2019年からは名門TOM’Sの一員として、今年もスーパーGTではauサーキットクイーン、スーパーフォーミュラではTOM’S Ladyとして同チームで活躍中だ。
「今までレースクイーンを7年やってきて、継続3年目を迎えたチームってTOM’Sしかないんです。今年もこうしてスーパーGTとスーパーフォーミュラでそれぞれポジションを与えていただけて、すごくありがたいですね」
「TOM’S Ladyはコスチュームのこだわりがすごくあります。毎年『こういうイメージにする』ってテーマを決めてデザインしています。今年は韓国アイドルっぽいデザインになっていますし、私もデザインを一緒に考えさせてもらったので、すごく愛着があります」
2020年には「レースクイーン・オブ・ザ・イヤー19-20」を獲得し、そこからテレビ番組の出演など、最近はサーキット以外でも活躍の場を広げている近藤さん。長年の夢でもあった“地元に貢献する”仕事も増え始めているという。
「レースクイーン・オブ・ザ・イヤーを獲って、RQ以外の仕事が増えた感じはありますね。例えばグラビアのお仕事だったり、DVDを出させてもらったりしています」
「地元に関わる仕事もやりたかったので、やっと地元に貢献できるお仕事がひとつできたのは嬉しいですね。道のりは長かったですけど、着々とやっていけているのかなと思います。レースクイーン・オブ・ザ・イヤーを獲ってから、知名度は上がっていると感じています」
サーキットでは常に写真を撮られることを意識しており、時には他のレースクイーンのポージングなども参考にするなど、常に勉強や努力を怠らないでいる近藤さん。基本的には、自身のキャラクターに合わせて自由にさせてもらっているそうだが、彼女がデビューしてからひとつだけこだわっていることがあるという。
「レースクイーンを始めた時に、時代の移り変わりもあると思うんですけど、私の中でレースクイーンというのは、“高嶺の花”みたいな感じがあったし、それに憧れていました」
「ファンサービスとかも、ほぼしないというか、どちらかというと“塩対応”みたい感じになっていたところが最初の頃はあったと思います。皆みたいにファンの方から“神対応”と言われるような対応はまったくしてこなかったですね」
「でも、今はコロナ禍でファンの方と接する機会が減ったので、それはそれで寂しいなと思っている自分もいます。やっぱりファンの方がいてくれて、ここまで7年間やってこれたので、最初の頃と比べるとファンの方を大切にしようという気持ちはありますけど……」
「だからといって神対応はしていないですし、どちらかというと、話しかけづらいようなレースクイーンが良かったなという思いはあります」
そんな近藤さんだが、7年のレースクイーンキャリアの中で、自身やレースクイーン自体の存在が必要なのか否か、改めて考える瞬間があった。それが2020年の前半戦だ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開催スケジュールが大幅に変更された2020シーズン。そのうちスーパーGTでは前半4戦を無観客で実施し、チーム関係者の人数も最小限にする対策をとった。その影響で各チームのレースクイーンは、しばらくサーキットに登場することができなかった。
「2020年に新型コロナウイルスの感染拡大があって、レースもスーパーGTの前半戦はレースクイーンもサーキットに入ることはできませんでした。でも、レースは普通に行われているんですよね」
「その時は気分もめちゃくちゃ下がっていたのもあって『レースクイーンの存在っていらないんだな』って思っちゃったんです」
「確かにレースクイーンがいなくてもレースは成り立つんですよ。最低限に人数を絞って、ドライバーさん、メカニックさんをはじめとしたチームの皆さんだけでやっているのを見て『あぁ、これが現実か』って、ちょっと悲しくなっちゃって……」
「そこから、ちょっとずつレースクイーンもサーキットに行けるようになって、今年は開幕戦から行けるようになって……改めてレースクイーンとしてサーキットに立てることのありがたみを感じました」
レースクイーンの存在とは? サーキットに行けないもどかしさも加わり、近藤さんは自問自答する日々を過ごしていたという。
2021年も期待と不安が入り混じる中で迎えたスーパーGTの開幕戦だったのだが、スタート進行でレースクイーンがグリッドボードを持って整列をした後、場内放送を担当するピエール北川アナウンサーが「レースクイーンの皆さんもスーパーGTファミリーの一員です」スタンドに詰めかけたファンとともに拍手で歓迎したのだ。
近藤さんのみならず、多くのレースクイーンにとって苦労が報われた瞬間で、なかには感極まっている人もいた。
「あれは嬉しくて、グリッドで泣きそうになりました。たった一言でしたけど、頑張っていて良かったなと思いました」
「レースクイーンという仕事はけっこう大変です。外から見ているだけじゃわからないことが多くて、夏は暑いし、冬は寒い。足は痛いし、朝は早いし……。大変なんだけど、でも、ここまで頑張ってレースクイーンを続けて来られたのは、やっぱりモータースポーツが好きだからなんです」
「こんなに好きなんだけど、(その想いが)一方通行みたいになっているのは嫌だなって思いました。だから、少しでも盛り上げられる存在になれていたらいいなと思っています。でも……本当になれているのかな?って不安になることは今でもあります」
「海外はモータースポーツが主流で人気もありますが、日本のレースも面白いのに、なんでこんなに人気がないんだろう、マイナーなんだろうと思ってしまいます。そこでレースクイーンという存在が、日本のモータースポーツを盛り上げるため、少しでも力になっていたらいいな……と思っています」
自身のためにレースクイーン活動を続けてきた近藤さんだが、今後は自分自身の活動を通して、少しでも多くの人にモータースポーツの存在を知ってもらい、興味を持ってもらうきっかけづくりをしたいと考えている。
「数年前に脇阪寿一さんとテレビに出演させてもらった時に『地上波の力って、やっぱりすごいな!』と改めて感じました。それを感じたのがSNSのフォロワー数です」
「私たちはSNSを頑張ってやっていると思うんですけど、あの番組で何分かしか映っていなくて、しかもほとんど喋っていなかったにも関わらず、ビックリするくらいフォロワー数が増えました。そこで改めて地上波の力ってすごいなと思いました」
「だから、自分が現役レースクイーンであるうちに、他のお仕事で地上波に出られることができた時に『レースクイーンという存在はまだいますよ。日本のモータースポーツってこんなに面白いんですよ』というのを……そこまで言えなかったとしても、レースクイーンという存在を皆さんに知ってもらえたらなと思います」
そんな近藤さんも、元々モータースポーツにまったく縁がなかったのだが、プライベートでやっていたスロットの機種内に当時人気レースクイーンとして活躍していた水谷望愛さんに一目惚れ。彼女を調べているうちに“レースクイーン”というキーワードが出てきたのが最初のきっかけだった。
「その時は『レースクイーンって、今でもいるんだ!』って驚いた記憶があります。RQは、けっこう昔というイメージが強いじゃないですか。私も最初はレースクイーンって昔の存在で今はないと思っていたんですよ」
「レースクイーンがいるということは、モータースポーツもあるということですからね。自分がもっとみんなに知ってもらうことが、モータースポーツをより多くの人に知ってもらうきっかけになるのかなと思っています」
レースクイーンの存在については、現在も様々な意見があり、時には心ない言葉が彼女たちに向けられるという話も聞こえてくる。ただ、実際には近藤さんのように、周りが思っている以上にモータースポーツを盛り上げるため、モータースポーツの知ってもらうためにどうすればいいかを、日々考え、努力している人もたくさんいるのだ。
■コスチュームギャラリー/近藤みやび
■2021レースクイーンインタビュー
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