レーシングミクサポーターズと言えば“つっつ”。9年連続で務める荒井つかさ「ミクサポは私にとって第二の青春!」

 今シーズン、サーキットに登場するレースクイーンに迫る「RQインタビュー」。第14回は、レーシングミクサポーターズを務める荒井つかさチャンが登場します。ミクサポ―9年目となった彼女の変化とチームへの想いとは?
 
 

RQインタビュー 2021 Vol.14 荒井つかさ

Text:Yoshita Tomohiro
Photo:Tabuchi Satoru / Yoshita Tomohiro
 
 スーパーGTをはじめ、国内主要カテゴリーで活躍するレースクイーンの中には、同じチームを継続して務めるというケースもあれば、1年ごとに他のチームへ移るというケースもある。
 
 全体の傾向をみると、同じユニットを継続するのは長くても3年というのが一般的だが、スーパーGTでレーシングミクサポーターズとして活躍し、2015年には日本レースクイーン大賞でグランプリに輝いた荒井つかささんは、2021年で9シーズン目を迎えている。
 
 トップレースクイーンのひとりとして活躍する彼女が、9年間で感じた変化と思いを語った。
 

レーシングミクサポーターズ9年目を迎えた荒井つかさチャン

レーシングミクサポーターズ9年目を迎えた荒井つかさチャン


 
 2012年にフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)のレースクイーンとしてデビューし“つっつ”の愛称で親しまれる荒井さん。当時は高校3年生ということで、新人ながら大きな注目を集めていた。
 
「当時は高校生でしたけど、学生の間だけ何か表に出る仕事をやってみたかったんです。それこそ、読者モデルとか。いろんな選択肢があったなかで、私の地元の群馬県館林市にレース関係者が多くて、そこで紹介してもらったのがレースクイーンのお仕事でした」
 
「実際にサーキットに連れていってもらったら『すごい!』って感動しましたね。こんなにキラキラした人たちがいるんだと思ったのと同時に、レースクイーンをやってみたいと思いました」
 
 レースクイーンを始めてからは、プライベートで観戦に来ることもあった荒井さんだが、最初はモータースポーツにあまり興味がなく、レースクイーンの仕事をしていくうちに徐々に思い入れも強くなっていったという。
 
「1年目の時に在籍させていただいたチームがすごく強くて、ずっと表彰台に乗る活躍をしていました。最初はそれがすごいことは分からず『強いチームなんだな、この結果が当たり前なんだな』と思って見ていました」
 
「でも、なかには結果が出ないレースもあって、その時にチームの方がすごく悔しがっている姿を見て『当たり前じゃなくて、みんなで一丸となって、それがしっかり噛み合っているから勝てているんだ』というのに気づきました」
 
「それぞれのポジションでみんなが一生懸命やってきていたから、勝ち取ってこれた1位なんだなと……。そうしてチームの皆さんと一喜一憂しているうちに、レースがどんどん好きになっていきました」
 
「それから、自分が担当していないカテゴリーも気になるようになりましたし、関係者として一緒にレースを観て、応援できるのがすごく楽しいし、幸せだなと感じています」
 
「もともと私は幼稚園の先生になろうと思っていて、レースクイーンはあくまで経験として学生の間だけやれればいいなと考えていました。でも、いざやってみたらレースが好きになり、レースクイーンを続けたいと思いが強くなって……今に至ります(笑)」
 
 荒井さんを語る上で欠かせないのが、2013年から在籍し、今年で9シーズン目を迎えるレーシングミクサポーターズでの活躍ぶりだ。今では、すっかり同ユニットの顔として定着している。
 
2013年、ミクサポ1年目の荒井つかさチャン

2013年、ミクサポ1年目の荒井つかさチャン


 
「他人事のようなコメントになりますけど……自分でも『すごいな!』と思います(苦笑)でも、本当にありがたいことです」
 
「今では、他のチームに行くというのが、考えられないですね。それくらい、このチームには思い入れもあります。本当に大好きなチームです」
 
 同じチーム、さらに人気レースクイーンユニットを9年連続でレースクイーンを務めるというのは、ほとんど前例がない。それだけに、そのすごさを荒井さんも実感できない様子ではあったが、9年という時間の中で、自身の立ち位置を含めて、色々と変化していったものもある。
 
日本レースクイーン大賞2015ではグランプリを獲得した荒井つかさチャン

日本レースクイーン大賞2015ではグランプリを獲得した荒井つかさチャン


 
「初音ミクちゃんというのは(存在が)大きすぎて、そこになりきるみたいなプレッシャーはないんですけど、応援してくれている個人スポンサーさんたちに、いちばん近い存在だと思うので、ミクサポとコスポさんの間にいようと思います。他のメンバーは変わっていくので、そこを私が率先してやらなきゃと常に思っています」
 
「最初は立ち居振る舞いとか、どちらかというと自分を中心にどうしていこうかを考えていましたけど、年数が経っていくうちに、意識が後輩にいくようになりました。『こうなってほしい』とか『こういうふうにチームを応援してほしい』とか、そういう気持ちが強くなりましたね」
 
「だから、後輩に対して色々と教えるようになりましたね。他のチームがどうなのかわからないですけど、たぶん他のチームより教えるのが厳しいと思います。レースクイーン同士、けっこう仲良く和気藹々という感じもありますけど、うちのチームはけっこう厳しくて、最初の方は裏で泣いているような子もいます……(苦笑)。そういったことを経験していって、成長したその子の姿を見た時は、こっちまで嬉しくて泣いてしまいます」
 
「チームが好きな分、一緒に応援するからには、一生懸命応援してほしいですし、そういう気持ちも大きくなります。意外とミクサポは“タテ社会”です(笑)」
 
 他のメンバーとGOODSMILE RACING & Team UKYOを応援し続けてきた荒井さん。チームは、この9シーズンの間にGT300クラスで2度チャンピオン獲得したほか、スパ24時間レースなど海外のレースにも挑戦してきた。

 その中で、最も印象に残っているレースについて聞くと、荒井さんは2018年の鈴鹿10Hを挙げた。

「あのレースでは、夜になるとグランドスタンドにいる皆さんがスティックライトで応援してくれるんですけど、ちょうどレース終盤で他のチームから追い上げられている時に、実況のピエール北川さんが『ライトを緑色にして、みんなで初音ミクを応援しましょう!』って言ってくれて、グランドスタンドが緑一色になった時は、すごく感動しました!」

「私が現地で応援させていただいた中で、10時間耐久というのがいちばん長かったレースでした。その中で、すごいドラマがあるなとも感じました。こんなに頑張って走ってきたものが、ひとつのミスやトラブルでなくなってしまうかもしれなくて……。応援している側も怖かったです」

「心配しながらの応援でしたけど、いちばん最後に疲れも出てきて大変な時に、観客席の皆さんが緑一色で応援してくださったのを見て……胸がいっぱいで涙が止まりませんでした。10時間が報われたというか、こんなにたくさんの人から愛されているチームなんだなと改めて思いました。あれは今でも鮮明に覚えています」

 数え切れないくらいの喜怒哀楽を、チームとともに経験し、その想いを共有してきた荒井さん。彼女にとって、レーシングミクサポーターズとはどういう存在なのだろうか。

「第二の青春ですね! 学生時代も楽しかったですけど、その時に感じた感動とか、辛さ、大変さがある中でも、楽しいと思える……そんな時間を、このミクサポでもう一度味わわせてもらっています」

「だからこそ、経験を重ねるにつれて責任感も出てきました。もし私が何か変なことをしたら、それがミクサポの評判に響いてしまいます。そこは年々考えるようになりましたし、これはミクサポだけじゃなくて、レースクイーンみんなに思ってほしいことですね」

「世間からすれば、レースクイーンのイメージは、あまり良いものではないところもあります。それをみんなが憧れる職業にしていきたいですし、女の子に憧れられるような職業になってほしいなと思いますね」

 レーシングミクサポーターズのみならず、国内モータースポーツのレースクイーンを代表する存在でもある荒井さん。そのポジションを自身でも、分かっているからこそ、今日も強い意識と、誇りを持って、サーキットに立っている。

 
■2021コスチュームギャラリー/荒井つかさ


 
 
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